パニクっていた脳みそと体の機能が、難聴の症状に少し慣れたのか、夕方になると、転落防止用のサイドレールを握ってだが、ヨボヨボジジイは上半身を起こせるようになった。尿瓶を使ったのは初めてだ。ちょいエロい気分になった。このボケ!
晩飯は、白ごはん、魚の揚げ物、あえもの、味噌汁、紙パックの麦茶(飲み放題)。ヨボヨボジジイ自分を鼓舞して白ごはん二口、あえもの半分、メインの揚げ物は箸つけず。味噌汁は美味かったが少し残した。
尿意と排出の嘘と裏切りの地獄の深夜がおでましだ。
漏れそうな尿意にうっすらと目が覚めた。尿瓶はベッド脇に備え付けてある。体を動かすたびにめまいや吐き気が襲ってくる。音が無いんだ音が、音は意識の酸素なんだ。意識が窒息死寸前のヨボヨボジジイはサイドレールをグラグラ揺さぶって上半身を起こし、ベッドの端に尻をずらしパジャマのズボンと紙パンツをずり下ろし、尿瓶をつかみ陰茎を入れようとしたが、ギャッ!届かぬ。ズリズリ尻を前方へずらし無事収めたが、あんれ?小便のやつがなかなか出てこねえ。出てきたのは夜勤のナースさんで、ヨボヨボジジイの尿瓶姿をチラッと見てサッとカーテンを引いた。揺さぶったサイドレールに巻き付けてあったナースコールが反応したのだ。
チョロチョロようやく小便が出てきそうな、局部のシビレがとけていくような感覚がありホッと息をつくが長い長い!チョロチョロチョロチョロ、アメリカの貨物列車か!
終わったかな〜、いやまだ微かに尿意があるかな?クンと陰茎をひきしめても出そうにない。終わった、あーシンド。紙パンツとズボンをずり上げ、真夜中のヨボヨボジジイはガタガタサイドレールを揺さぶってベッドに横になった。ナースさんが来た。
サイドレールを揺さぶるとナースコールが反応することに気がつくまで、ナースさんに4〜5回無駄足を踏ませてしまった。真夜中のヨボヨボジジイ少し泣きそうになった。
朦朧としている意識に時間の経過はつかめない。また尿意だ。エー!さっきしたやん。苦しいがサイドレールを持たずにベッドの端に座る。尿瓶に陰茎をたらすが、局部が通電のビリビリの感じ、尿意だろうこれは!あれ?出えへん?エ〜!フェイクか、マジか。パンツをあげてベッドに横になると尿意がおさまった。どうも左側を下にして寝ると尿意がおさまる傾向がある。しかしまた強い尿意だ、どうせフェイクだ、我慢だ我慢、左側を下にして我慢しろヨボヨボジジイ!あら、出た?マジか!急いでベッドの端に座りパジャマと紙パンツをずり下ろし、尿瓶を掴むとジョー〜〜〜。ア〜〜〜天国・・・。し、しかしヨボヨボジジイ、ゲゲゲの落胆・・・。股間の間のベッドのシーツが、直径10センチ程の円い灰色に湿っていた。・・・い、いつ出たんや?・・・。恥辱のため息を吐き出し、横になるとまた尿意だ、ベッドをよごしたてまえ、すぐに起き上がり尿瓶をつかむが、出ない。横になるとすぐまた尿意だ。こ、これは紛れもない突発性尿意症だ。
突発性難聴の次は突発性尿意症。熱にうなされたヨボヨボジジイ真夜中に苦笑する。
失敗は2度できない。尿意のたびに尿瓶をつかむが出ない。嘘の尿意、排出の裏切り。嘘の尿意、排出の裏切り。真夜中のヨボヨボジジイKO負け寸前。熱はあるし、頭の中はグラグラやし、吐き気まであるっちゅうねん。ベッドの端に座り尿瓶に陰茎を突っ込んだまま、朦朧の頭を乗せた上半身を前後左右にゆすっていた真夜中のヨボヨボジジイに神様の恩恵が舞い降りた。
座って上半身を右に傾けた時、膀胱の中の少ない小便が出口の方へ動いたのを、敏感に感じ取った真夜中のヨボヨボジジイは、上半身を右へ傾け少し待ち、ジョワリジョワジョワと温かい小便を尿瓶の底へ落とした。マジ!出た!それからは尿意があれば、座って体を右え傾ければ少量だが小便は必ず出た。
漏らす不安が消えた真夜中のヨボヨボジジイは、このノーベル賞級の大発見を、「不景気小便法」と命名した。(右肩下がりだけに)しょぼいがまあまあのネーミングだ。
2023年1月16日の朝を、コロナ感染と突発性難聴のヨボヨボジジイは空腹感を持って迎えた。
コメント