原発の町11 11月3日黒島に巨大ドームをかぶせる重大イベントの朝が来た。金を落とす見物客が押し寄せてくるのを、商魂剥き出しのにわか商人達が待ちかまえいた。

 人口8200人余りの伊方町に、国内外から100,000人以上の見物客が上陸し、鮨詰め状態の伊方町佐田岬半島が宇和海側に傾いた。隣の八幡浜市にも黒島を遠望できる地域が何ヶ所かあり、伊方町から溢れた見物客10,000人程がそっちへブーブー車で流れた。そこでは地域活性案ブラックブームを推す八幡浜新町商店街から出店した飲食店や和洋菓子屋さんが、黒だしチャンポン、黒いライス、粕黒まんじゅう、黒豆のモンブラン、黒焼きそば、黒ジャコテンなどを販売した。頭に黒をつけた便乗商売はウハウハだった。

 目と鼻の先に黒島がある特等席の大浜は、地形的にも海岸から山頂まで、どの場所からでも正面に黒島が見え、見物客が一番賑わい、近隣からにわか商売人が多く集まり多種多様な商品が売られた。

 宇和海の南、太平洋上空には巨大ドームの影や形はまだ無く、露店やみかんの直売所として使われている大浜の公民館の広場は、手持ちぶたさの見物客で溢れていた。

 わしは八幡浜から来た。製餡業、あんこ屋さんや(64歳)。46年ほど前高校の時や、一枚500円したかな?地元を応援するつもりで100枚ほど買ったんや。A面じゃなくB面がいいんじゃ。同級生に配ったが70枚ほども残った。それがじゃ、ここの(大浜)同級生に、一枚1,000円で売れるでゆうてそそのかされて、こうして売ってんのや。古いシングル盤レコード、和島千代子歌う・・・ちがうちがう!島倉千代子じゃない、和島千代子の『愛媛思情」ええ歌うやで。10枚ほど売れたで、地元の年寄りが懐かしい言うて涙目で買ってくれたわ。聞きたいってか?しゃあないなあ。

 「ヨボヨボ!あんこジジイが歌う愛媛思情!張り切ってどうぞ!」左隣で骨董品を売る老婆がガラガラ声を張り上げ、一緒に歌いだした。

詩 松本ひろし 曲 山路進一

 「よ!こしあん!」合いの手を入れた右隣で本を売る小太りの菊池のジジイ(70歳)が、笑う見物客へ両手を広げた。「これは、愛媛県喜多郡内子町出身、ノーベル賞作家大江健三郎先生の本やが」ブルーシートの上に50冊ほどの単行本が無造作に平積みされていた。「飼育」を読んでからわしは先生の大ファンになったが。先生の単行本は読破したつもりや。先生は核を、原発を、目の敵にしておるが。原発を誘致したこの伊方町も目の敵にされとるがと思う・・・・。2013年出版の「晩年様式集」73ページに書かれているアサさんの言葉を6年ぶりに読んで、わしは落胆するよりもカチンときたが。次の文章や。 『いまのところ四国山脈のわたしたちの側は、放射性物質の汚染度が低いから・・・・・・伊方原発が事故を起こせば、なにもかもフイですけどね・・・・・・アカリさんが、東京からアグイーと疎開してくれば、ギー・ジュニアは喜ぶでしょう。』

・・・・・・伊方原発が事故を起こせば、なにもかもフイですけどね・・・・・・

・・・・・・伊方原発が事故を起こせば、なにもかもフイですけどね・・・・・・

 なにもかもフイではすまされない伊方原発の町の人たちのことを、突き放しているように感じてわしはカチンと来たが。フクシマ後のこともあり、2013年最初の通読のおりは気にとめなんだが、6年後、70になったわしにはカチンときたが。・・・・・・。

 しかし!しかしや、わしがアホやった。ノーベル賞作家の大江先生はやっぱりわしらの先生やったが。伊方原発が事故を起こせば、なにもかもフイですけどね。事故を起こせば、なにもかもフイですけどね、、なにもかもフイですけどね。わしは朝昼晩復誦してみて感じたが。

・・・・・・伊方原発が事故を起こせば、なにもかもフイですけどね・・・・・・この語り方は地元で生きた者の言い草や。間違いないが、大江先生は伊方町を、愛媛県を憂慮していたがや。先生は、30キロメートル離れていようが原発の町伊方町は自分の地元じゃと意識しておったのじゃ。・・・・・・。間違いないが。

 「ノーベル賞作家の「晩年様式集」!1800円!原価でっせ!買った!買った!」

 「おーい!昼飯が届いたぞ!」大浜青年団団長の掛け声に村の中学生や高校生らが群衆をかき分けて桟橋へ急いだ。伊方町を縦断する国道197号線は大渋滞に陥っており、海上の小回りのきく小さめの釣り船が物流を担う中心だった。八幡浜や、宇和島から運ばれてくる食料品、飲料水は陸揚げされると瞬く間に消費され、公民館の広場まで届かなかった。じゃこ天、かまぼこ、魚肉ソーセージなど南予の特産品とアルコール類は昼前に完売していた。少し早い青いミカンも婦人会総出で売りまくった。

 四国の西端の原発の町が、ロックフェスティバルの嵐を模擬体験しているのだ。

 もう一つ完売した物があった。老人会が企画販売したぬいぐるみだ。「下手こいたが!500と言わず1,000個発注しとけばよかったが」「半額セールが効いたが、9640(クロシマ)円の半額、4820円消費税込み、5000円でお釣りがくる、絶妙な数字やったが」「孫娘ににポケモンのゲーム買ってやらなあかんがな」「しゃあないがな、クロシマ君はみかちゃんの落書きからパクったやんから」

 完売したぬいぐるみ、「クロシマ君」4820円(税込)

クロシマ君

 自己中の背徳者のクロシマ君。

 「金は糞尿や、ばら撒いて初めて役に立つ」(本のうけうりです)

 魚肉ソーセージは八幡浜の「(株)西南開発」が日本で一番早く商品化に成功したんや。

 八幡浜のちゃんぽん。ロンドン、丸山、イーグル。他にも美味い店ありまっせ。

 ミカンといえば?エヒメミカン!オレンジジュースといえば?ポンジュース!

 便所を覗いたらカラスになりまっせ。

 ♪私の愛媛 心のふるさと♪・・・・・クロシマ君音痴。

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