鼓膜にメスを入れる!あんなでっかいメス、耳ん中入らへんやろ!無理にいれたら血だらけや!アホ!ヨボヨボジジイビビってんねん、鼓膜を切るって、水でパンパンの風船を切るようなもんや。頭がバーンと破裂して脳みそが日本中に散乱や。メガネの先生とようディスカッションやって、鼓膜を切るか切らないかはそれからの決断やと嫁と誓っとたんや。
ヨボヨボジジイ関西メデイカル病院耳鼻咽喉科の戦略にはまる!?
予約10時。標準純音聴力検査を行い、待合室で1時間ほど待った後、No,6の扉を開けた。さあ診察だと緊張のヨボヨボジジイ、「そこ座って」椅子を指差す横山やすし風メガネの先生。「はい」とヨボヨボジジイ、「検査結果の用紙を」と先生。「はい」と嫁。検査用紙に目を走らせた横山やすし風メガネの先生、さあディスカッションや!と身構えたヨボヨボジジイの耳元で「きょう、一回めのステロイドちゅうにゅうをおこないまっせー!」と大声の漫才口調。「はいでんがなー」とヨボヨボジジイ間髪をいれず返してしまった。アカン、掛け合い漫才説得術やー!
エ〜、診察は?ディスカッションは?早や!ヨボヨボジジイ、何が何やら?トントン拍子の納得。となりの嫁、目ん玉がオセロゲームや!
嫁は一旦帰宅し、ヨボヨボジジイ1日入院。616号室、担当の看護師さん、プロフェッショナル。「昼食後、この痛み止め飲んで、次回から割り箸とテイッシュを持参のこと」看護師さんの大きなゆっくりした声が耳もとで響いたので、ヨボヨボジジイは理解したと笑顔を返した。「わり箸?」昼食に割り箸もついてないんかーい?この病院の戦略は?読みきれんわーい。「テイッシュ?」まあ後で用途はわかったが。
うどん食って、痛み止め飲んで、体温と血圧測って、ベッドの上でうとうとしていたらメガネの横山やすし風の地獄の閻魔様がやってきて、「ますい・・・・・・・」と言うとヨボヨボの枕を取り上げ、グイッと頭を捻り、上を向いたジジイの右耳の穴に、液体らしきものを冷たく流し込んで、「あとで・・・・・・・」と閻魔様がカーテンを揺らして去っていった。鼓膜を直に触られた不快な感触が残るヨボヨボジジイはそのままの姿勢でまどろんだ。
キーン!金属音が頭をはたいた。看護師さん二人がベッドのブレーキを解除し、グイグイベッドの方向を変えていた音だ。「そのままで、しょりしつにいきますね」耳元の言葉をなんとか理解した。揺れ動くベッドの上で気分が悪くなりそうだったヨボヨボジジイは、動く天井を見てしのいだ。処理室に入った。ヨボヨボジジイ不安で目をつぶった。ドクターXが(移動中のベッドの上で考えた先生の別称)ベッドの横に座りヨボヨボジジイの頭を捻った。強いライトだ、閉じた瞼の裏がひかった。右耳の穴の周りが柔らかいものでガードされた。・・「静謐」があった・・。来るな、ガガ、ガガガ、ガガガ、右耳の奥が鳴った。鼓膜を切られたのだ、痛みは少ない。注入されたステロイドは冷たく鼓膜の奥でドロリとうねり、平衡感覚の狂ったヨボヨボジジイは、放り上げられたピザ生地みたいにグルグル回転させられベッドの上で船酔いみたいに吐き気をもよおした。
病室に戻り、そのまま右耳を上にした状態で20分間待機しなくてはならない。しばらくすると鼻の奥からドロッとした液体が、口中に溢れ出てきた。何度かテイッシュに吐き出し、看護師さんがまくら元に用意してくれた小さな箱に捨てた。右耳を上にしたまま、ヨボヨボジジイ意地でも動かない。
20分経ったのを知ったのは、看護師さんがヨボヨボジジイの右目の目頭に溜まっていた涙を、テイッシュでさっと拭ってくれたからだ。看護師さんは、体温、血圧を測り、握った右手の人差し指をさっと一本立て、さっとカーテンを引いて部屋から出ていった。
1時間後、ラインで連絡済みの嫁と6Fで待ち合わせ、1Fに降り治療費を払い、病院を出たのは3時過ぎだった。
ステロイドはん気張って働いて、突発性難聴をぶっ飛ばしてや!頼んまっせ。
一月の寒風で空元気が震える。
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