転院先の関西メディカル病院に到着。ストレッチャーからストレッチャーへ、そしてようやく病室のベッドへ、その都度、自力で移れと看護師さんの仕草、冷たい気もするが、やれることは自分でやれということだ。患者への厳しさは看護師の責務か。ヨボヨボジジイ唇を噛み締め、上半身を斜めにしてベッドへ移動した。もちろん看護師さんのヘルプがある。
窓を殺したコロナ患者用の薄暗い隔離病室へ入った時から、両耳が聞こえないヨボヨボジジイのために看護師さん等はコピー用紙を挟んだA4クリップボード、サインペン、ボールペンによる筆談を始めてくれた。患者との正確なコミュニケーションをとることも看護師さんの責務か。ありがたいことだ。
パルスオキシメーターを中指にはめられ、心臓と肺の辺りに何かをペタペタ貼られ、その数値を飛ばす器具をパジャマのポケットに入れられた。体温と血圧を測った数値を、看護師さんはいちいちヨボヨボジジイに見せてくれた。点滴用の針を左腕に優しく、ホンマに優しく刺していただいた。何かあればこのボタンを押して。尿瓶はここよ。手振り身振りとクリップボードに挟まれたコピー用紙の文字、文字、文字、文字。
ベッドで朦朧としているヨボヨボジジイは時間の経過がつかめない。突然、問診にいらっしゃった耳鼻科のメガネの先生がヨボヨボジジイを見下ろしていた。「左耳はかなり以前から難聴で、今回、正常だった右耳が突然聞こえなくなった」とヨボヨボジジイは言葉で答えた。ー突然に?ー 先生の文字。「突然に!」ヨボヨボジジイのオームがえし。ー突発性難聴です。明日から点滴によるステロイド投与治療ですー。先生の文字。ス、ステロイド、初めて見る文字だ。
昼食は寝たまま手を振って拒否した。
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