原発の町7 放射能汚染の元凶、黒島が晒し者にされる。放射能汚染の伊方町から住民流出?!

 2019年9月〇日、原子力規制委員会(NRA)による専門的調査および精密分析の結果を受け、政府は、本日午後5時、NHKのニュースに合わせて重大発表を行った。

 伊方町沿岸部および宇和海一帯において実施された広域モニタリングの結果、測定された放射線量はいずれも年間換算で10ミリシーベルトを下回る数値であり、現時点において、当該地域住民の健康および人体への影響は確認されていない。一方で、黒島島内および周辺海域の一部において、年間換算で50ミリシーベルトを超える局所的な線量が確認された。政府は、国民の安全確保を最優先とし、原子力災害対策特別措置法に基づき、本日午後5時をもって「黒島全域の隔離および封鎖」を決定した。不測の事態に備え、当該区域への立ち入りを厳重に禁ずることとする。

 今般の局所的な放射線量の上昇については、これまでの分析により、放射性物質を含む「外部からの漂着物」に起因するものと推定される。なお、現在稼働中および停止中の伊方原子力発電所における異常、および本事案との関連性は一切確認されていない。

 政府は引き続き、原子力規制委員会を中心に黒島周辺海域の環境モニタリングを最大レベルに強化し、漂着物の特定および回収作業に向けた専門チームを派遣する。国民におかれては、政府および自治体から発信される正確な情報に基づき、冷静な行動を期されたい。

「・・・・正確な情報?アレレのレ・・・」丹野スズはテレビを消した。

 同級生のシゲちゃんの家の二階からは、夜でも月光があれば、瓦屋根の間から海と黒島が望めるはずなのですが、今夜はブラックホールを覗いてるみたいで真っ暗です。上下グレイのジャージの丹野スズは黒猫と窓辺に座り、親密な距離から聞こえてくる潮騒にやすらぎをみつけていました。政府による放射能汚染公表に伊方町はざわつきましが、町からすぐ避難した人は子供を持つ一部の親達だけでした。逆に押し寄せて来たメデイアの人達に黒島を望める桟橋を占領され、私と黒猫はシゲちゃんの家に逃げて来たのです。

 源ジイさんを心配して病院へ連れて行ったシゲちゃんは、そのまま一泊して帰りは明日になります。「源ジイさん軽い打撲で済んでよかった。シゲちゃんの横面すごかったもの、ねえ〜黒猫さん」

 「私はよそ者だし、明日保内へ帰ろうっと」丹野スズは黒猫の喉をくすぐる。「明日からこの町は戦争だよ。メデイアの人や野次馬でごった返すはずだ。それはそうと黒猫さん・・・、あなたも相当な歳だと私は踏んでるんだけど。でも、黒猫さんの脚の傷、治りが遅いのは歳のせいだけじゃないと思う。被ばくの影響も少しはあると思う」

 「放射能をぶっかけた三毛猫さんが心配、どこにいるんだろう?」丹野スズは頭をあげて暗闇を見つめた。

 「知ってるが・・」黒猫は脚の傷を舐めながら言った。

 「えー!黒猫さん言葉喋れんの?」

 「ニャーゴ、この放射能まみれの傷を舐めると、人間の言葉が理解できるし、喋れるようになった。煩わしいことこの上ないがね。あなたの探している三毛猫は雲の上ですよ」

 「雲の上?・・えー!、死んじゃったの!ガーン!わたしが、私が殺したかも?」 

 「確かにあなたと無関係ではないが、被ばくで死んだのではないです。あいつはあなたから受けた恩をあなたに返しただけです」

 「えっ!なんの恩?もしかして、擦り傷を治してあげようと、汚染した海水をぶっかけたことじゃないでしょね?」 

 「あなたもあいつも汚染した海水だったとは知らなかったし、・・あの海水で三毛猫の腐った傷が全治したのは間違いないです」 

 「じゃあ・・・・傷が治ったお返しに、三毛猫さんは自分の命を生贄にして私を歩けるようにしてくれたってこと・・・わたしに恩を返すために死んだの?・・」「ちょっとまって!なんかスッキリしない!」「わたしは・・・・、私は騙くらかしている、三毛猫さんを、でしょう?黒猫さん」「ネー、黒猫さん、早く傷を舐めて何か言ってよ」

 黒猫は無視した。 

 「このまま恩を借りっぱなしじゃ、私は保内に帰れない!」丹野スズは頭を落とした。

 煩わしいと思ったが、黒猫は放射能の傷を舐めて丹野スズに言った。「お願いがあります。私は、黒島に行きたい・・・・」

 「メーン!」丹野スズの頭の中で、浜野シゲの竹刀が空を走った。 丹野スズは満面の笑顔で黒猫の頭を撫で回した。

私の命にかえても黒島へ連れてってあげますよ、黒猫さん

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