『難聴、難聴って、豆腐か! 11』  重力のある「沈黙」の圧力から、無重力の「静けさ」へ解放されたマスクヨボヨボジジイ。クリアー(明晰、鮮明、透明)な空中に浮かんでいるクリアーなマスクヨボヨボジジイの至福。

 なんて清々しいんだ。空間だけではない、マスクヨボヨボジジイ自身がクリアーなのだ。ヒャー!明晰で、鮮明で、透明で、空気より軽いみずみずしい精神と肉体。夜中から未明のどこかで、クリアーなマスクヨボヨボジジイが、明晰で、鮮明で、透明な大自然の「静けさ」の中に浮かんでいる。

明晰な音、鮮明な音、透明な音。

 朝6時点呼、フェイスガードさんが熱いおしぼりを持ってくる。フェイスガードの奥に笑みがあったりなかったり。最初は、熱いですよと振ってくれていたおしぼりも、今はビニールに入ったままだ。背徳者のマスクヨボヨボジジイ不満ではない。朝7時、もうすぐおいしい朝食ですよと、割り箸とスプーンをテーブルに置く。空腹のマスクヨボヨボジジイ、ヘイヘイヘイヘイと上体を起こし、クンクンクンクンとお座りして朝食を待つ。アッレー?マスクヨボヨボジジイちょっとペット気分・・・・。ウ〜ワンワンワンワン!

 「千里に雪が積もりました」フェイスガードさんの新鮮な報告に、マスクヨボヨボジジイは部屋を出てフロアーの端の窓から千里の街の写真を撮った。目の前のビルとビルの間のモノレールの高架線と、その向こうの、雪で光る明晰で鮮明で透明な千里の街を撮った。

 モノレールの高架線は、マスクヨボヨボジジイが自宅へ帰る「」だ。

 斜め向かいに隔離患者が入り、いつの間にか510号室はめでたく満員御礼!

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