2023-07

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原発の町17 黒島はいつかのフミさんの家みたいにシーンとしている。夕暮れの桟橋の先端に立つミツジジイはアリとメジロと同級生の事を考えていた。

 一つ目はアリ。スズ婆に促されたシゲ婆が渋々ミツジジイに教えてくれた、フミさんの、一回こっきりの、最後の、40年間分の、血と涙と糞尿まみれにした姉ちゃんへの感謝の遺言。  「姉ちゃん、アリが10匹」 1970年  二つ目...
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原発の町16 「幸せな人だけなんですかね、夢と現実の間に垣根さえないのは」18歳の時、交通事故により下半身付随になった同級生の言葉。

  ミツジジイはフミさんの言葉を思い出していた。  フミさん喋る。  「いちいち「ありがとう」はいらん、それに一回や2回で済まんやろが、一番最後の、でっかい一回だけでいいがや」と姉ちゃんに強制された時、まあ、面倒臭くなくていい...
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原発の町15 「生贄連れて来たが!」シゲ婆の家の前にミツジジイをほったらかして、源ジイはトンネルの出口のように光る桟橋へ、ねじまきのロボットのように下っていった。

 「だれが?」シゲ婆はガラガラと玄関の扉を引き開け、夕影の中のジジイを訝った。「・・・何しにきたがか!」シゲ婆は敵だとわかると顔を顰めた。「あなたにフミさんからの伝言があります」影の中のミツジジイが言った。「・・・アン?」シゲ婆は気色ばん...
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原発の町14 漫画「楽天家族」。ぐちょぐちょ、おちゃらけ、ケ・セラ・セラ、トイレットペーパー、うなぎにカエル、コウモリに、クネクネ!ヨボヨボジジイ。

 兄貴が立候補した2014年の伊方町町長選を利用して、38年間交友のなかった半身不随の車椅子生活の同級生にミツは連絡をとった。角形A3号の茶封筒を郵送したのだ。中身は、近況のあとに、還暦の漫画家デビューを目指しますと一文書き足した...
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原発の町13 黒島隔離封鎖終了。100,000人の無秩序の移動が伊方町の時空をかき混ぜる。源ジイはミカン山の雑踏の中に懐かしい顔を見つけた。

 ミカン山の中腹を走る農道は移動する見物客でごった返していた。「ミツ!逃げんなや!」源ジイは犬をたしなめるように、モスグリーンのチノパンツにグレイのパーカーを着た中肉中背のヨボヨボの背中へ大声を投げた。中肉中背のヨボヨボが急に止まり雑踏の...
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2023年(20)ヨボヨボジジイ豊中警察署に出頭、両耳に装着したピカピカのブラック補聴器が心強い味方だ。

 6月8日、待ちに待った補聴器をはめた耳と、運転免許証更新ハガキと、今回は一発OKの証明写真(1000円!4月に撮った証明写真、サイズ違いで使用できず!なんでや!)を持って豊中警察署へ出頭、運転免許証の更新だ。  視覚検査はあるが、...
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