2023年(10) 1月26日にコロナ隔離解除。不治30%、先が見えた突発性難聴、ヨボヨボジジイファイテイングポーズ崩さず。

 ステロイドの点滴投与が一週間で終わり、月曜から内服薬治療に変わった。隣のヨボヨボは点滴スタンドを杖がわりに、よっちらこっちらトイレや歯磨きにいそしんでいる。ベッドの上で上半身を起こし、ボロボロこぼしながら食事をする向かいのヨボヨボは、看護師の苛立ちが見えない。以前から難聴だった放蕩息子の左耳が、ここぞとばかり雑音を拾い始め、ガッ、ビイー、グワン、大きな音を頭に響かせヨボヨボジジイを辟易させている。ステロイド点滴の効能は不良の更生だった。

 耳鼻科の先生にステロイド鼓室内注入療法をすすめられる。ステロイド点滴の結果が思わしくなかったのだ。鼓膜を切ってその奥へステロイドを流し込む治療、ギョエ!鼓膜を切る!ヨボヨボジジイ怯む、怯む。

 1月26日(木)午前10時、コロナ隔離解除、ヨボヨボジジイの退院日だ。翌日、金曜日に1回目のステロイド鼓室内注入療法が決まった。

 1月23日。不良は不良だ、左耳が過敏に拾うのは雑音ばっか、肝心の人間の言葉は聞き取れない。退院まであと三日、ヨボヨボジジイの品の悪さが過敏になった。朝方4時の採血なんてお安い御用でっせ。看護師さんの、「お通じありました」の言葉は、「クソ出た?、クソ出た?」のオバはんの茶化しに聞こえ、シャワー室の排水の悪さに誰の毛やねんと突っ込んだり、紙パンツを三日間履き替えず、クサ!1週間着っぱなしのユニクロのヒートテックはまだ3日はいける匂いだと娘にラインを送った。クサ!クサ!クサ!

 下腹が張り、苦しくなったヨボヨボジジイは、二度あることは三度あるじゃ、突発性難聴、突発性尿意、そして突発性排便じゃ!夜中にナースコールのボタンを押し、「腹が痛い、浣腸したい」とヨボヨボジジイは無理矢理口角を上げて、若い看護師さんに媚びた。

 510号室は四つに仕切られており、真ん中の通路の奥にスポットライトを浴びた簡易便座が品格を持って鎮座している。ウイヒヒヒ。どうせなら三人のヨボヨボに浣腸し、今宵深夜、ヨボヨボ対抗便器争奪戦を勃発させよう。その臭い打ち上げ花火を想像して口角を上げているヨボヨボジジイの手のひらに、若い看護師はピンクの小さい粒を二つそっと落とした。

 鼓膜を切るステロイド注入。ウッヒャー!ヨボヨボジジイ、怯む怯む。喜怒哀楽が過敏になるのも致し方あるまい。

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