『難聴、難聴って、豆腐か! 12』  コロナ隔離病棟の人々。二度あることは三度ある。マスクヨボヨボ達の幸運を祈る。

 90度にうなだれたマスクおばあちゃんが車椅子に乗って退院する。焦茶色のダウンジャケットに、小さな紙袋を一つ膝に乗せている。フェイスガードさんが一人付き添う。5F、ナースステーションの前のエレベーターに乗り込む。フェイスガードさんが優しく話しかける。マスクおばあちゃんは小さく笑う。1Fに着く。「ばあばあ!」マスクポニーテールの女の子が車椅子に走り寄ると、その子の頭にマスクばあばの小さな手が乗る。「おかえり」マスク娘夫婦とばあばのマスク友達が笑顔で待ちわびていた。絶対にそうだ。

 防護服を破り、脱ぐ、脱皮だ。フェイスガードさんは何度も脱皮する。

ピンクのパジャマと防護服が歩行練習をしている。

 よりそうはフェイスガードの責務だが、それは最上位ではない。

 2、3日前から気になっていたことがある。こっちのマスクヨボヨボがトイレから帰ると、待ってたとばかり仕切りのカーテンが波打ちあっちのマスクヨボヨボがそそくさとトイレに立つ。それが2、3回続くと、逆にあっちのマスクヨボヨボがトイレに立つと、こっちのマスクヨボヨボももよおしてくる。そしてついに、夜中に2度も、あっちとこっちのマスクヨボヨボ2人がトイレでかち合ったのだ。幸いトイレは2ヶ所あって助かったが。

コ、コ、コ、コレは、突発性連れション症候群!  ギャー!

 突発性難聴、突発性偽尿意症、突発性連れション症候群、二度あることは三度あった。

 入退院の連鎖が続く510号室のマスクヨボヨボジジイ達は幸運なのだ。このマスクヨボヨボジジイも、明日退院。突発性難聴不治100%。

 真夜中の怪。

点滴棒がいっぱい?祝退院????

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